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高濃度酸素室を作る場合の酸素毒の視点からみた注意点と高気圧酸素との比較

低酸素環境を作る場合、大気中の空気を「低酸素」と「高濃度酸素」に分離します。

分離された「低酸素」を密閉空間に溜めると低酸素室になります。同じように分離された「高濃度酸素」を密閉空間に溜めれば「高濃度酸素室」を作ることもできます

高酸素環境では、ヘモグロビンが運べる酸素量には限界があるものの、血漿中に物理的に溶け込む「溶存酸素」が増加します。これにより毛細血管や低酸素状態の組織にも酸素が届きやすくなり、細胞の代謝が促進されます。疲労回復や創傷治癒、脳機能のサポートなどに効果が期待され、特に末梢循環が弱い高齢者や回復期の患者に有効です。

各条件下のPaO₂と溶存酸素量

条件 気圧 (ATA) 酸素濃度 (FiO₂) 吸入酸素分圧 PiO₂(mmHg) 溶存酸素量(mL/100mL血液)※
室内空気(通常環境) 1.0 21% 約 160 mmHg 約 0.31
常圧 × 高濃度酸素 1.0 50% 約 380 mmHg 約 0.72
常圧 × 100%酸素 1.0 100% 約 760 mmHg 約 1.48
高圧(1.3 ATA)× 常酸素 1.3 21% 約 208 mmHg 約 0.65
高圧(2.0 ATA)× 常酸素 2.0 21% 約 320 mmHg 約 1.00
高圧(2.0 ATA)× 100%酸素 2.0 100% 約 1520 mmHg 約 3.10

しかし高濃度酸素環境を構築する(空間・吸入等、酸素バーなど含む)場合は酸素毒性に関して理解しておくことが必要です。

高濃度環境を構築する際の注意点

高濃度酸素環境を構築する際には、利用者の安全性確保のために「酸素毒性(oxygen toxicity)」のリスクを理解し、適切に管理することが重要です。酸素毒性とは、過剰な酸素曝露によって活性酸素(ROS)が過剰に生成され、細胞障害を引き起こす現象で、主に肺と中枢神経に影響を及ぼします。

常圧下で酸素濃度を高めた「高濃度酸素室」では、特に肺が最初に高濃度酸素に直接さらされるため、酸素毒性は「肺型酸素毒性」が中心となります。FiO₂(吸入酸素濃度)が60%以上になると、数時間〜数日の継続曝露によって肺胞上皮が損傷し、炎症や肺水腫、さらには線維化が引き起こされる可能性があります。肺表面活性物質の減少による無気肺や換気障害も併発しうる可能性があります。これを防ぐため、高濃度酸素室ではFiO₂を40〜50%程度に抑え、1回の使用時間を30〜60分以内とすることが望ましいとされています。

一方、日本国内の医療現場等で用いられる高気圧酸素療法(HBOT)では、1.3〜2.0 ATAの加圧環境下で常酸素(20.9%)を使用するケースが多く、この場合、吸入酸素分圧(PiO₂)は上昇するものの、酸素毒性のリスクはきわめて低いとされています。特に100%酸素と異なり、常酸素ではPaO₂が400mmHg前後にとどまり、中枢神経型酸素毒性(痙攣や意識障害)や肺毒性が臨床上問題になることはほとんどありません。

つまりは、高濃度酸素室(常圧×FiO₂高)では肺毒性に留意する必要がありますが、高気圧×常酸素の環境では酸素毒性を過度に懸念する必要はありません。ただし、高気圧下で100%酸素を用いる場合や、長時間・頻回の使用が行われる場合には、酸素毒性リスクが増すため管理が必要となります。いずれの環境においても、酸素濃度と使用時間を利用目的に応じて慎重に設定することが、安全かつ効果的な運用につながります。

なお、健康増進や疲労回復などを目的として高濃度酸素環境を導入する場合には、酸素毒性のリスクを避けるためにも、使用時間・頻度・酸素濃度の上限を明確に設けることが重要です。 一般的には、酸素濃度は40〜50%程度までに抑え、1回あたりの使用時間は30〜60分以内、週に2〜3回程度の頻度が安全な目安とされています。これにより、体内の溶存酸素を穏やかに増加させつつ、肺や神経系への過剰な酸化ストレスを避けることができる。導入にあたっては、対象者の年齢や持病の有無、目的に応じて個別に調整することが望ましいです。